サツキの花をつかった原形質分離の観察

イッセイです。サツキの花を使うと細胞の観察が楽です。また,原形質分離を失敗なく観察することができます。

「原形質分離といえば,ユキノシタ」というのが定番です

大学での実習では,ユキノシタという植物の細胞を使って観察しました。

ユキノシタ

ユキノシタは,日陰を好む植物です。

葉の裏

ユキノシタの葉の裏は赤い色をしています。

斜めに裂くと,表皮が剥がれてきます。

顕微鏡で観察するのは,この赤い皮です。一層の細胞が膜になってできていて,表皮と言います。

薄い表皮だけを残します

スライドグラスの上において,薄い表皮だけ残るようにピンセットなどで切ります。

プレパラート

水をかけてカバーグラスを載せてプレパラートの完成です。

水で封じたときのユキノシタの表皮の細胞

次に,濃い塩水などを垂らしてからカバーグラスをかけてつくってみます。

すると,外部と同じ濃度になろうとして細胞が水をだしていくために,赤色が濃くなった細胞がみえるようになります。

細胞壁は濃さに影響されずそのままの形を維持しているのに,細胞膜の内側の細胞の部分は水分が抜けて小さくなってしまいます。すると,細胞壁と細胞とが離れてしまいます。これを原形質分離といいます。

一夜漬けといった漬物をつけるときは,これです。

大根といった植物に塩をかけてしばらくすると水分が大量に出てきます。一個一個の細胞から水分が抜けているわけです。

ユキノシタの難点

先の写真のように,美しい赤が鮮やかに見えますから,ユキノシタが素晴らしい材料であることは間違いありません。

ただ,実習をするのは初めてこの材料を触る生徒さんです。

葉の裏の毛

ユキノシタの葉の裏にはたくさんの長い毛が生えています。

プレパラートをつくるときに,たらす水の量が少ない子がいることでしょう。すると,ユキノシタの葉の裏の毛があるために,空気だらけのプレパラートになりがちです。

また,大きい細胞が集まっているところと,小さい細胞があつまっているところが見えます。生徒にはどちらの細胞をみたらいいのかわからない子がでてくることでしょう。

さらに,実習を実施する教師としては,「どこにユキノシタが生えているの?」という大きな問題があります。買ってくるの?どこかの山地に探しに行くの? 手に入れるだけで,大変な手間です。

私の勤務している学校のように自生していると楽なのですが,そんな学校はまずないでしょう。

サツキはいい材料ですよ

サツキは,五月に花が咲くツツジの仲間です。この花が細胞の観察にとっても便利なんです。

サツキの花

サツキは,学校によく植えてあります。植えてありさえすれば,5月から6月にかけて花が咲くので「ああ,あそこにサツキが植わっているんだな」と見つかることでしょう。

これは「自分で育てなくても材料がそこにある!」ということになります。

花びらを斜めに裂くと表皮が取れます

サツキの花びらを斜めに裂くと,表皮がとれます。

薄皮だけを観察します

薄く赤い表皮だけを切り取って,プレパラートを作ります。

この点は,強調しすぎるぐらい強調するとよいでしょう。

生徒は,しばしば,薄皮のとれた花びら全体を水で封じてプレパラートにしてしまうからです。

空気は入るは,カバーグラスは斜めになっているは,もう大変です。

水で封じたときのサツキの細胞

表皮に水を垂らしてカバーグラスをかけると,こんな細胞が見えてきます。

サツキの花びらには毛はありませんし,細胞の大小はありません。

同じような細胞がたくさん並んでいて,なおかつ,色がついています。

細胞ってこんなのだよと示すにはとてもよい材料だと思います。

拡大すると,細胞壁が透明に見えて,その内側には薄ピンクの細胞が見えます。

(細かいことをいうと,薄ピンクの原形質です。原形質の中でも,液胞に色がついています)

サツキの細胞の原形質分離を見てみましょう

10%食塩水といった濃い液を垂らしてからカバーグラスをかけます。すると,原形質分離を見ることができます。

ユキノシタと同じく,濃縮されて濃くなった赤が見えます。

拡大すると

原形質分離をしたサツキの細胞を拡大してみました。

濃い色が印象的ですから,それだけでも生徒さんは喜んでくれています。

サツキの難点

サツキの難点は,花が咲いている時期だけしか使えないことです。

授業の時期さえ合わせることができるならば,とてもよい実習材料だと私は思います。

分子の目で見てみると

細胞の一番外側を包んでいる細胞膜は,脂質でできています。

私が学生の頃は「水分子は小さいから細胞膜を通り抜けるのだ」と習いました。

「実際に通り抜けているから,そうなのんだろうなあ。でも,なんで通り抜けることができるの?脂質だから水をはじくはずなのに」と漠然と学生の頃は思っていました。

その後,アクアポリンというタンパク質が細胞膜を貫くようにあって,水分子の出入りを管理していることを知りました。原形質分離もアクアポリンのしわざでしょう。

次の図は,PDBというタンパク質の分子の構造を蓄えているサイトの,5BN2というAquaporinの分子データをMolViewで表示したものです。水分子は,この分子の真ん中付近をうまい具合に運ばれています。

分子模型をコンピュータでグリグリする:MolView

顕微鏡での撮影の方法

私はiPhone用のマウントアダプタホルダーを使っています。

ケータイのカメラが四角の窓の真ん中に見えるように位置を調整します。

接眼レンズに四角の窓をはめると,ケータイの画面に顕微鏡像がでてくるのです。位置の調整はかなり必要ですが,安定して撮影できるので重宝しています。